深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)沢木耕太郎 ¥ 420 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
深夜特急〈1〉香港・マカオ... | |
| その昔、1ドルが360円だった。それがバブル期に80円になったこともあった。円高はバックパッカーに都合が良く、またアジアへの旅はもともと物価が安く過ごすことができるメリットがあって私のような貧乏学生にも海外旅行ができた。この小説を読むと、今すぐにでも旅立ちたくなるが、現実的には、家庭を守り、子どもを進学させねばならず、家のローンも残っているし、仕事をやめる勇気はない。ということで、再び合流する楽しみは20年先の退職後にとっておく。 小説中にとても共感できる部分が、2つある。その1つは、道を聞かれるくらいに現地に溶け込むと、旅人側は好奇心に満ち溢れていても、現地の人から外国人とは思われず、透明人間になっていくような快感があるということ。 もう1つはマカオのカジノで大金をスッてドロップアウトするのか、しないのか心理的な境界線上の揺らぎを主人公は一種の快感だという。 この2点に共感できる理由をうまく説明できないのだが、いずれにせよ、知人友人肉親、学校、会社、地域社会などから完全に切り離された一人の人間として、誰からも関与されていない心地よさがあることは確かだ。他にリンクして考える必要が無... | ||
深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)沢木耕太郎 ¥ 420 通常24時間以内に発送 ★★★★ |
深夜特急〈2〉マレー半島・... | |
| 香港を出発して、マレー半島を下ってシンガポール向かう第2巻です。 なんといっても娼婦の館での件が面白すぎました(笑)。なんか陽気で和気あいあいとしてる 雰囲気が伝わってきて思わずニンマリ。娼婦にたかるヒモの若者達なんてギャグにしか思えな いが世界は広いもんだ(笑)。 前回から亘って、同じアジア圏でも色々と差異もあり読んでて面白いですね。何か旅先で 出会う人々をみてると、やっぱ日本人って真面目なんだよなぁ〜と感じます。まぁそのぶん つまんないのかもしれないけどね。 人物描写もいいんだけど、食べ物の描写がいいな〜。僕なんか普段食べたか食べないかわか らないぐらい、食べることにこだわりも執着もない人だが、これ読んでると不思議なことに 無性に食い意地がはってきます(笑)。なんかどれもこれも美味しそうに思えてくる。 あと巻末についてる対談は高倉健さんとです。「死に場所を見つける」なんてヤバイぐらい カッコいいタイトルだが、内容も渋くて勉強になりました。オススメです。 私達はどこか別の世界に連れて行ってくれることを期待して本を読むことが多いです。この本は、ページをめくればいとも簡単に夜行... | ||
深夜特急〈3〉インド・ネパール (新潮文庫)沢木耕太郎 ¥ 420 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
深夜特急〈3〉インド・ネパ... | |
| とにかく深いインド・ネパール編。第八章の「雨が私を眠らせる」は手紙という表現上も あわせて本当に淡々と描かれているが、それがまたアンニュイな気持ちにさせて、じめじめ した気候を想像すると自分がとけていきそうな気がする。 第九章の「死の匂い」の死体焼き場をポツンと眺めてる著者を想像してると、気が滅入るが そこの描写にあるように不思議な恍惚感が湧いてくる。 インドって国は不思議な国だとは思っていたが、何かこれを気に勉強してみたくなるような もしくは行って見たくなるような変な気持ちになりました。 それにしても貧困に苦しむ子供たちの姿には胸が痛くなるが、本当にちょっとしたきっかけで みせてくれる笑顔などというシーンでは心が温まるね。。。 あとラストの対談ではブッダガヤで出会った此経(これつね)さんと懐かしい回想などをして ましたが、興味深く読めて面白かったです。カルカッタ/ブッダガヤ/カトマンズ/ベナレス/デリーと転々としながらいろんな経験をしている様子が分かります。 筆者が旅行をしている時代のインド/ネパールの状況も分かります。 現在の状況と比較してみたくなりました。 前2巻と比較して... | ||
深夜特急〈4〉シルクロード (新潮文庫)沢木耕太郎 ¥ 420 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
深夜特急〈4〉シルクロード... | |
| このシルクロード編を読んでいると、文中でも使われてる蒼味を帯びた風がスーッと吹いてく るようなそんな感じを受ける。最初の方の勢いというものが薄れていき、著者自身の内面描写 にスポットが当たる部分も多い。だが迷い迷う姿には誠実さがあるような気がした。 ここでは乗り合いのバスがメインで淡々と進む所があるので、ある種起伏に欠けるが、それで も一台のバスの中に多国籍の放浪者達が集まる画は想像しただけで何か面白いし、バスの窓か ら時折覗く景色に非常に心が揺れるね。淡々としてるが、そこここに微妙に違う色があって 感慨深いね。 最初の香港編から物乞いはずーっと出てきたが、ここで登場したロッテルダムの男という青年 が、ほぼ限りなく文無しに近いのに、それでも物乞いの子供たちに自分の金をわけてやる姿に は感動したし考えさせられたね。著者もそこで衝撃を受けて、ある意味解放されて自由に なったと書いてるが、ほんとあげるのが良いとか悪いとかの理屈じゃないのね。生きるのも 生きれるのも理屈じゃないと、、、。 ここから旅も冬に突入するのかも、蒼味を帯びた風が吹いたとき、それがどこから吹いてるの かと前に進め... | ||
深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)沢木耕太郎 ¥ 460 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
深夜特急〈5〉トルコ・ギリ... | |
| 旅にも幼年期、青年期、壮年期、老年期とあり、この巻では壮年期にあたる部分を描いている 確かにエネルギッシュに前へ、前へというよりは、何か心の隙間を埋めるように、それを 求めて前へ進んでいる印象を受けました。 個人的にはトルコ編はほのぼのとしていていいなぁ〜と思います。香港のスターフェリーも いいですが、こちらのアジアとヨーロッパを往復するフェリーは本当に羨ましいなと、、、 朝起きて、朝食を食べ、散歩してから食料を買いフェリーで風に吹かれぼーっとして、また 帰ってくる、たったそれだけの事がものすごく贅沢に思えてくる。 ギリシャ編では、スパルタの廃墟で出会った老人の件が感慨深いですね。年をとって好奇心 が磨耗しても人とだけは関わりたいというのがやっぱり素直な所なんだろうなぁ、、、 散歩してたらいきなりバースデーパーティーに誘われる件も、読んでて癒されます。やっぱ 人と人との繋がりはいいなと。 地中海からの手紙の章では、今までの旅の事をなかば自棄になって顧みてたりしますが、ほ んと人生の壮年期と同じですよね(笑)。 最後にいったい何を得るのか、次の巻が楽しみです。アジアからヨーロッ... | ||
深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫)沢木耕太郎 ¥ 460 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
深夜特急〈6〉南ヨーロッパ... | |
| スペインのマドリードで昼は市を、夜は居酒屋をうろつく中で沢木さんは段々、無の感情に 蝕まれていきます。そこで懊悩してる時に、思い出したのがタイで会った夫妻に言われたこの 言葉で、そこに答えを見つけようとする、、、僕はこの深夜特急を最初から読んで、ずーっと 思っていたが、この人は何でこんなに真面目、いや誠実なんだろうと。。表面的な無鉄砲な ユニークさはあるが、内面は誠実そのもの、常識人だし、大人びてるし、保守的だし、確かに 育った世代もあるかもしれないが、この人は誠実そのものだと思う。 そう考えて振り返ると、深夜特急が何故こんなに面白いと思ったとき、この内面の深さは 結構あるんじゃないかなぁとね。普通(普通の26才、まぁまだ青年だよ)の人にだったら きっと、もっと表面的、センス的な所、フィーリング的な所が大事だろうし、もしくはもっと 単純か、逆に理屈っぽいかのどっちかだろう。つまり沢木さんが見たその国や街、あるいは 市場や広場、とりわけ人々への内面へ内面への観察力や、もしくはそれが一番大事とする 精神があるからこの本は面白いんだろう。 そしてそうゆう人柄が行き着く先々で縁を作るんじゃな... | ||
遠い太鼓 (講談社文庫)村上春樹 ¥ 840 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
遠い太鼓 (講談社文庫) | |
| 海外のことをこんな目線で おもしろおかしく 捉えられるのがすごいと思います。 なおかつ、読んだあと旅に出たくなる一冊。人気作家、村上春樹の旅行記です。奥様と日本を離れ、ギリシア、イタリアに滞在した3年間の記録です。観光地等ではなく、現地でアパートを借りての生活の記録です。ジギングをしたり、買い物に行ったり、レストランやカフェで食事をしたりです。ランチア・デルタを買い、ドライブをしたりしています。当然、故障のエピソードもあります。滞在中、翻訳をしたり、ノルウェイの森を書きあげたりしています。とうてい、普通の人にはできない外国体験ですが、作家の感性が伝わり、面白い旅行記です。最初、著者も言うように、時差ボケなのか、面白くないのですが、だんだん、面白みをますので、最初で、つまらないと思い、投げ出さずに、最後まで読むのをお勧めします。こういうところ、演出なのかどうかわかりませんが、著者はすごいなあと思います。とにかく楽しくて面白い。 何がどうこう言うより、とにかく面白い。 何が面白いのかよく分からないけれど、読後感はとても良い。 村上氏のエッセイが嫌いじゃない方にはお勧めです。日常生活に疲れ... | ||
見仏記 (角川文庫)いとうせいこう みうらじゅん ¥ 700 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
見仏記 (角川文庫) | |
| 本能のみうらさんと理性のいとうさんの掛け合いが絶妙です。 写真・イラスト・キャプションも、爆笑につぐ爆笑。 ページが進むにつれ、永遠にこの本が読み終わらなければいいのにと思いました。 仏像が好き!この本を読んだあとは、心から言えます。 アツい「仏友」たちに乾杯…いとうさんとみうらさんのコンビ、最高ですね。 全く考え方の違う2人、だけど、凄い共通項を感じる。 仏像好きの自分としては、本当にみうらさんのテンションがよくわかる! まさに仏像を『見に』行くのではなく、『会い』に行くのだ★☆★ 仏像に恋焦がれて、思春期の少年のような2人。 凄く可愛い。 いろんな視点で、仏像を語ってる2人を見ていると、 あ〜〜今すぐにでも、自分もお気に入の仏像たちに会いに行きたい 衝動にかられてどうしようもない。 わかりやすく描かれているから、 どんな人にでも抵抗なく読めるのではないかな? と私は思いますよ。多分。 笑えますしね、くくくと・・・♪イラストレータの「みうらじゅん」と作家の「いとうせいこう」が、各地の仏像を見てまわる旅行記をまとめたシリーズの第一弾。 古代日本の仏教を醸成した奈良や京都はも... | ||
富士日記〈上〉 (中公文庫)武田百合子 ¥ 980 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
富士日記〈上〉 (中公文庫) | |
| 出版するために書かれたものではないらしく、 日々、ただ淡々と家族の様子を綴っています。 何事もない平凡な日々の記録にこんなも幸福を感じられることに驚きました。 毎日の献立や買い物メモなどが中心で、 うどんとトーストを一緒に食べたり、 すごく食べ合わせが変な日もある。 けど、その気ままさ、おおらかさが妙に心地よくて、 その辺にこの作品の人気の秘密があるんだろうなぁと感じます。 百合子さんはさっぱりしてて気持ちのいい人。 よく食べて、面倒見が良くて、料理上手、 素晴らしい観察眼、そしてユーモアもある。 百合子さんの人間性にいつしか読者はひかれてしまいます。 周囲の人々と仲良く助け合って、 家族だけでなくみんなと生きていることの楽しさが伝わってくる。 劇的な展開なんかまったくないし、 どんどんページを読み進めたいというわけでもない。 「面白い」とかそういうんじゃなくて「なーんか好き」。 心の奥にずっと大切に抱いていたいような本です皆さんが言うように、不思議な魅力を持った日記です。読むと、とても落ち着く。なにか、宙に浮いていた足が、地に着くような(私にとって)作用があります。東京での生活... | ||
ハワイイ紀行 完全版 (新潮文庫)池澤夏樹 ¥ 940 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
ハワイイ紀行 完全版 (新... | |
| ハワイのガイド本は幾つもあるようですが、この本は、1年かけても出かける前に読んで損の無いものでしょう。 私はこの本で、あの首に掛けてもらうレイと日本の節句の菖蒲が、その植物の生命力を身にまとうという点で、共通することを知りました。その様に自分に引きつけて読むと、楽しい1冊になるでしょう。 ぼんやりとハワイの陽光を楽しむばかりでなく、こうした本を抱えて楽しむのが、これからの観光の真髄となるのではないでしょうか。この本は観光案内ではない.Hawai'i の歴史に始まりHawai'i語の歴史に注目する.一時は全面禁止にまで追いやられた言語が,有識者達の努力によって復活し,遂にアメリカの一つの州の公用語のひとつとしての公的地位を獲得すると言う驚くべき物語が詳細に語られる.そうしてその言葉の上に咲く,神々への捧げ物としての踊りが目覚しく語られる.私はこれほど感動的な話をほかに知らない.著者が Hawai'i にこれほどの思いを込めるのは,日本が持つあと二つの文化 (オキナワとアイヌの文化) に深い憂慮を抱くからであろう.私もこの問題に憂慮する者なので,この本の意図はよく理解できるし,この本にめ... | ||
摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)永井荷風 ¥ 840 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
摘録 断腸亭日乗〈上〉 (... | |
| 荷風38歳から死の前日、79歳まで書き続けた42年間の日記の抄録のうち、 昭和11年、58歳までを収めたもの。 旧仮名遣いの文語調、加えて矢鱈に漢語が出てくるので大変読みづらいが、 荷風自身の思想、感懐、批評に加えて、時事、風俗、流行、情景等が 克明に記されており、資料的価値もありそう。 そもそもこの人、自らを江戸の戯作者に擬し、隠退的生活を決め込みながらも、 高級官吏の長子として父の期待に沿えなかったことに対して、心のどこかに 敗残の思いが巣食っており、シニカルではあるが、どこか世俗への執着を 感じさせるような記述が多い。 時事問題についても、無関心を装いながらも、時に鋭い分析というか、 警鐘を鳴らしており、例えば、いわゆる上海事変の起こった昭和7年(1932年) 4月9日の日記にはこうある。 「…世の風説をきくに日本の陸軍は満州より進んで蒙古までをわが物となし 露西亜を威圧する計略なりといふ。武力を張りてその極度に達したる暁 独逸帝国の覆轍を践まざれば幸いなるべし。…」 慧眼であったと言えよう。大正11年7月9日、森鴎外没。 「森先生は午前7時頃遂に紘を属せらる。悲し... | ||
野球の国 (光文社文庫)奥田英朗 ¥ 500 通常24時間以内に発送 ★★★★ |
野球の国 (光文社文庫) | |
| 筆者が地方球場で野球を観戦したことに関するエッセイ集です。 野球観戦だけではなく、その観戦旅行全般について書かれています。 ある意味、紀行文と捉えてもいいのではないかと思います。 沖縄のキャンプから、台湾での公式戦、東北での二軍戦、九州でのマスターズリーグ等を見に行っています。 周辺の様子とともに、地方球場ならではの良さというのが伝わってきます。 屋根のない球場に野球観戦に行きたくなりました。 また、筆者の「ぼやき」と思われる記述があり、その部分はあまり読んでいて面白いものではありませんでした。本書は野球に関する小説ではありません。また、著者はどちらかというと野球に精通しているわけではありません。では何が本書に書かれているかというと、著者が地方の野球場を視察しがてら練習を見たり試合を見たりの道中におけるホテルの雰囲気とか食事のおいしさとか、映画の内容だったりマッサージの良さ等をダラダラと書いています。著者なりのセンスで読みやすく面白く書いてはいますが、小説家が自分の日記を出版してお金を稼いでる感じがすごくしました。人の日記を読むのに500円を出すのって何となくもったいないかな?という... | ||
富士日記〈中〉 (中公文庫)武田百 合子 ¥ 980 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
富士日記〈中〉 (中公文庫) | |
| 上巻ではなんとなく硬く業務的だった感じも、この中巻では富士の生活に大分馴染んでいた様子でのびのびとした感じが窺え、読んでいる自分もこの日記に馴染んでいくというか益々武田百合子さん及び富士山麓で生活する人々に親近感が湧き、近くに住んでいるような気にさえなってきます。 取り留めない本ですが、いつの間にか手放せない本になっています。 日記を最高に楽しめる読者は書いた本人だとずっと思っていました。つまり、日記とは、未来の自分に当てた手紙なのだと。 しかし、この富士日記は、日記も普遍性をもつんだ、と私に気づかせてくれました。通勤や就寝前に数ページ、読み進むのがふさわしい本です。 どうでもいいことですが、表紙裏の筆者の写真はかっこいいです。昔の女性は、タバコを吸う姿がサマになりますよね。 | ||
摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)永井荷風 ¥ 798 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
摘録 断腸亭日乗〈下〉 (... | |
| 本書は断腸亭日乗から一部を選んで編んだものである。題名通り摘録かはわたくしには判断できない。本書を読み終えて興味を持った方は旧字旧仮名で書かれた日乗を読むことを勧める。岩波から6巻本も出ている。荷風の他の作品が,滅んでもこの作品だけは,残るといわれる作品。すごい和漢混合文である。ここに,本当に自立した1人の人間がいる。戦中の暗い時世のなかで荷風の反軍国・反官の舌鋒は凄みを増して冴えわたり、挿入される街のうわさや風聞録のたぐいがコメディ・リリーフ的な役割を担い、当世女性流行の服飾や髪型のヘタウマ風スケッチに荷風の視力の確かさが見てとれる。内容的には昭和16年のものがおもしろい。最晩年の荷風はほぼ毎日浅草銀座へ通い続けるが、その行動は八十歳間近の老人とは思えない。ただ、興味関心は薄らいでいくばかりで生活がハンで押したように固定化単純化されていき、内容も無味乾燥となる。最後の年(昭和34年)の日記が無常である。突如体調を壊し、以後、病臥の日々が続く2ヶ月間に日記は次第に短くなり、とうとう月日と天候のみが記されていく。「四月二十九日 祭日 陰」。さながら、ロウソクのともし火がふっと消えていく... | ||
富士日記〈下〉 (中公文庫)武田百合子 ¥ 980 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
富士日記〈下〉 (中公文庫) | |
| 武田百合子さんの生き様には本当に心を打たれました。自分をしっかりと持ち、夫にもかいがいしく振舞う姿勢に敬意を感じました。特に、散発や髭剃りをする百合子さんの姿は夫への限りない愛情を感じずにはいられませんでした。女として生きる、今よりもきっと決められた概念の中で暮らしていかなければならなかったでしょう。けれども、愛する人のそばにいるだけで女性は幸せなのかもしれない。それはとても大切なことかもしれないと思いました。「あとがき」からも感じられる夫への愛がこの作品をさらに深いものにしているように思いました。マガジンハウスから出た「クウネル」創刊号に載っている武田花さん(お二人の娘さん)のインタビューも必見です。 | ||
おくのほそ道(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)¥ 560 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
おくのほそ道(全) (角川... | |
| 普通の解説書と違い、まず現代語、ついで原文と解説という構成になっており、分かりやすいと言えばわかり易いことがこの本の真骨頂です。 確かに理解しやすことはなにものにも代え難いのですが、「月日は百代の過客にして、行きかう年もまた旅人なり」という深みと語感のある書きだしが、「時は永遠の旅人である」とやられては余韻もなにもあったものではありまえせん。古典が入試科目にあるかどうか分かりませんが、受験生の付け焼き刃用参考書には最良の本と思えました。しかし、趣味の読書にはどうなでしょうか ?タイトル通りです。僕の20年来の古文コンプレックスを取り去ってくれた上に、俳諧の妙味の入り口を示してくれた。芭蕉だけではなく、俳句という偉大な文学ジャンル自体に関心を持つきっかけを作ってくれた。 風流などまったく解ず、俳句に関しては全くの門外漢の小生でしたが、簡単に読めるとの触れ込みだけで手にしたこの本で心洗われてしまいました。 芭蕉の句の評価についてはいまさら小生ごときが申すことはありませんがとにかく読みやすく面白いです。 白河の関、平泉、多賀城…この響き、そして空想の中の情景に漂泊の思いが絶えなくなってしま... | ||
街道をゆく (40) (朝日文芸文庫)司馬遼太郎 ¥ 630 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
街道をゆく (40) (朝... | |
| まだ全シリーズは読めてないのだが、今まで読んだ中では最もおすすめ。残念ながら今となっては李登輝氏が政権を去って久しいが、本書では「新しい台湾」が生まれたばかりの躍動感を嬉々としてリポートしている。この沸き立つような言祝ぎ(ことほぎ)は、司馬遼太郎のマイノリティ好きに端を発している。本書を読めば分かるのだが、今でさえ、アジアに存在する国やエリア――「台湾」は後者である――の中で、「中華民国」ないし「台湾」ほど甚だしい政治的マイノリティも珍しい。その台湾で抑圧されてきた本省人(広義の台湾土着人)が国家元首に就くことが、そして本省人の手によって民主化されてゆくことが、司馬遼太郎にはどれほどめでたいことだったか、それは彼の物書きとしての信条を崩してまで、政治的対立のある一方の政治家に強い思い入れを見せたことでも分かる。この司馬の行動は当時多少ならぬ波紋となったようだ。もちろん台湾の政治的立場にあって、「日本」や「日本人」に対して格別のサービスを見せることは、当時の「中華民国総統」李登輝氏にとってもかなり複雑な政治的効果を生む「敢為の行動」であり、これら、相互のこもごもを日本語の慣用句で表現す... | ||
辺境・近境 (新潮文庫)村上春樹 ¥ 500 通常24時間以内に発送 ★★★★ |
辺境・近境 (新潮文庫) | |
| いくつかの章立てになっていて、日本国内から海外までいろんな地域をカバーした旅行記。とりわけ僕の心に残ったのは、「ノモンハンの鉄の墓場」。 「ついこの間」の戦争である「太平洋戦争」のきっかけとなった「満州事変」跡地を辿るものだが、この戦争が「ついこの間」だったことをありありと描いている。日本だとかの戦争は、ずいぶん昔のことであり日本は完全決別した遠い過去のような扱われ方をしているが、これが誤った認識なんだな、と改めて感じさせられる。村上春樹さんの本はほとんど読んだけど、久しぶりに手にとってみたのがこの本。 やはり不思議な魅力がある。 不思議な魅力、と言ってしまうのは簡単だけれどそれを人に伝えるのはすごく難しい。 比喩を含めた様々な表現の仕方がツボにはまる、というところか。 本書で言えばプラスして所々に挿入されている写真や絵が、実際旅に出ていない私を 刺激し、あたかもその場でうどんを食べているような気分にさせてくれる。そういった 意味では村上春樹アテンドの旅行番組のようだった。 肩を張らず自然な雰囲気で旅を楽しめた。 そういう意味で人を旅に出た気分にさせる村上さんはすごい、と思う... | ||
雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)村上春樹 ¥ 380 通常24時間以内に発送 ★★★★ |
雨天炎天―ギリシャ・トルコ... | |
| 旅の醍醐味を気負わずに、 淡々と語ってくれているという 旅情気分そそられまくりの一冊であった。 紀行ものというより、とりあえず感想・・・という感じが良い。 男性しか入れないギリシャの修道院の島、アトスの、 新鮮な食べ物の描写や、 どんどん過酷になるトルコの誇りっぽい町の雰囲気。 どれも、ドキドキさせられる。 (トルコには、2年前に行ったのに、 私の知らないトルコばかりだった。) 親切には素直に感謝して、おせっかいには正直に辟易する。 偏狭の地を旅する男って、タフぶりを強調したがるものだが、 編集社の金で現地ではバカ高い船をチャーターしたことも普通に語る。 とにかく肩がこらない。 このマイペースぶり。 私は好きだな。確かにこの本は率直で、現実的な(こういった旅行記にはあまり向かない)エピソードばかりが目立ちます。 それも、あまりにバックパッカー的な話ばかりです。(環境の劣悪さ等々) この手の話に付き物のありがちな誇張はなく淡々と旅が進み、読み手は退屈を覚えるかもしれません。 正直なところ旅行記としてはあまりに地味だし、エッセイとしても魅力に欠けます。 この本では著者は完全に旅行者... | ||
街道をゆく (1) (朝日文芸文庫)司馬遼太郎 ¥ 525 通常24時間以内に発送 ★★★★★ |
街道をゆく (1) (朝日... | |
| 長州路への司馬氏の思い入れが印象に残ります。 怜悧と言われ、計算高い、とされた幕末の長州藩。吉田稔麿の項で、司馬氏は率直に彼が好きだ、と述べています。彼は新撰に襲撃された池田屋事件で、一度は逃げおおせたもの、長州藩邸から彼は池田屋に舞い戻り、憤死を遂げます(元々、池田屋にはいなかった。後から藩邸から駆けつけたという説もある)。彼が池田屋に戻るべき積極的理由はなく、現にそのまま生きおおせた同志もいたにも関わらず - 彼はまず間違いなく、同志を見殺しするに忍びず、躊躇なく死地を選んだようです。司馬氏は長州藩を維新の雄藩に引き上げたものは、吉田稔麿という高杉晋作や久坂玄瑞と松下村塾で並び称された一藩士の志であり、こうしたマインドこそが長州藩と諸藩との信を繋いだのだ、と述べています。 余談ですが、司馬氏は、久坂玄瑞は吉田松陰に松下村塾随一と評されたが、その資質はいささか疑問、と言っています。高杉晋作や木戸孝允は人を安易に殺したりはしなかった、久坂は「天誅だ!」と人を殺めたことがある、やや軽率なところがあったのではないか、と述べています。 こうした人間模様を描きながらの長州路に思いをつの... | ||